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プラスチックリサイクル: イノベーションとオートメーションが循環型経済を実現

プラスチックのリサイクルが始まったのは、1970 年代にプラスチック素材が日常生活に浸透してから 20 年後のことです。 ただし従来のリサイクルでは、当時のプラスチック消費量に追いつくことができず、急速に変化する今日の世界にも追いつくことができませんでした。

1950 年には、世界のプラスチック生産量は約 200 万トンでした。 Statista によると、2020 年の世界の総プラスチック生産量は約 3 億 6,700 万トンでした。これは新型コロナウイルス感染症がプラスチック産業に与えた影響により、前年より若干減少した値です。

これだけ新しいプラスチックが流通すれば、その多くがリサイクルされると思うかもしれませんが、そうではありません。 毎年作られるプラスチックのうち、リサイクル用に回収されるのはほんの一部で、そのほとんどが実際にはリサイクルされていいません。 その結果、ほとんどのプラスチックは埋め立てられ、最終的には環境中に放出されて、陸と海の両方で世界のゴミと汚染を増大させているのです。

1992 年以降は、高所得国から排出されるプラスチック廃棄物の大半が、数百の低所得国に輸出されて処理されており、最大の受け入れ国は中国です。 米国生命工学情報センターによると、これはプラスチック廃棄物を管理し、埋め立てや焼却に回されるのを防ぐ出口となっています。

しかし、中国の 2018 年の「国門利剣(ナショナルソード)」政策がこの状況をを変えつつあります。 この政策が導入される前、同国の生態環境部によると、2017 年のピーク時には 4,227 万トンもの汚れた混合リサイクル品を輸入しており、そのほとんどは汚れがひどく再利用できないものだったそうです。  Yale Environment 360 に掲載された2018年の報告によると、同国が輸入したプラスチックのうち、禁止措置以前であってもリサイクルまたは焼却されたものは13%未満にとどまっていました。 残りは埋立地へ運ばれるか、川や海へ流されており、中国が新政策を実施した主な理由の 1 つは、こうした分別やリサイクルが難しい低品質のプラスチックの輸入を減らすことでした。

国連の 2021 年 10 月の報告書によると、プラスチック汚染はすべての生態系にとって脅威となっており、中国やその他の国が世界のごみの半分を取り込まなくなった現在、この問題は 2030 年までに 2 倍を超えようとしています。 米国ではプラスチック廃棄物のリサイクル率が 1 割未満、欧州では 3 分の 1 程度と、欧州のほうが高いリサイクル率を維持していますが、今後はこれらの国々が輸出できないプラスチックを抱えることになり、プラスチック事情はさらに悪化することが予想されます。


生命の環

リサイクルの促進は、この問題に対する論理的ソリューションのように思われます。 しかし残念ながら、従来はすべてのプラスチックがリサイクル可能なわけではなく、繰り返しリサイクルできるものもほとんどありません。 テイクアウトの食品容器やマーガリン、ヨーグルトの容器など、消費者が使用した後のプラスチックのほとんどは、従来の機械によるリサイクル方法では「リサイクル不可能」と見なされ、大部分は焼却されるか埋立地へ送られることになります。

このプラスチック、ポリプロピレンは、ほとんどリサイクルされていません。 「樹脂識別コード 5」として知られ、シャンプーボトルやプラスチックカップ、自動車部品や医療機器など、あらゆるものに使用されています。 従来、これらのプラスチックから汚染物質や色、臭いを除去してリサイクルするには、費用と手間がかかり、結果も芳しくありませんでした。

現に毎年生産される 1,700 億ポンドのポリプロピレンプラスチックのうち、リサイクルや再利用で再生される割合は 1 % 未満です。 これは、世界で最も汎用性が高く、広く使われているプラスチックが循環型経済に適合するように、リサイクルの努力を強化することに大きな機会があることを意味しています。 循環型経済では、製品寿命が尽きた時点で資源を回収し、再び生産に回すことで、製品が環境に与える影響を最小限に抑えることができます。 具体的には、既存製品のリサイクルやリユースといった面では、環境への炭素放出を減らすことも大きな目標です。


イノベーションが救いとなる

リサイクルのイノベーション技術が普及すれば、材料設計から分離、再加工までの完全循環型経済が促進され、古いプラスチックに新しい生命を吹き込めるかもしれません。 たとえばケミカルリサイクル技術は、現在使われている機械的処理を強化したり、代替したりすることができます。 この技術では、高熱か化学反応、またはその両方を使用して、使用済みプラスチックを新品のバージンプラスチックに近いプラスチック、燃料、その他の新しい化学物質や製品に変えます。

これらの技術により、環境中に流出する可能性のある膨大な回収不能プラスチックを削減できます。 使用済みプラスチックに含まれる色やにおいなどの汚染物質を除去するためには、高度な技術が必要です。 そして、エマソンが提供するサービスのようなオートメーションは、使用済みプラスチックを新しい製品に変えて廃棄物や汚染を減らし、プラスチック製造コストを引き下げるために不可欠な役割を果たすことができます。

ポリプロピレンの新しい利用法を導入した 2 つの会社は、プラスチックリサイクルの可能性を例証しています。 PureCycle はプラスチックをバージンに近い純粋なポリプロピレンに戻し、新品同様の状態でプラスチック経済に再導入します。一方 ReNew ELP は混合プラスチックを高品位の化学物質とオイルに還元し、新しいユースケースとアプリケーションの原料を提供します。


従来のポリプロピレンと同様に使用できる新生ポリプロピレン

フロリダ州オーランドに拠点を置く PureCycle Technologies は、革新的な技術を用いて廃棄物をほぼ新品同様のポリプロピレンへと再生し、同一用途へ再投入することを可能にしています。 このプロセスはProcter & Gambleによって開発され、色、臭気、不純物を除去することで、バージン材に近い特性を持つ超高純度の再生ポリプロピレン樹脂へと変換し、新たなプラスチック製品の製造に利用することができます。  

「再生プラスチックは通常、灰色を帯び、不快な臭気を有し、規制上の懸念となる不純物を含んでいます」と、Procter & Gambleのサステナブル材料開発担当シニアR&Dディレクターであり、PureCycleで使用されている溶媒精製プロセスの発明者であるJohn Layman氏は述べています。

Layman 氏によると、より良質なリサイクルポリプロピレンの需要に応えることができるのは、現在この技術だけであり、この技術は PureCycle と環境の双方に利益をもたらします。 Layman 氏は、「今日、消費者は自分たちが購入する製品が環境に配慮したものであることをますます期待するようになっています。 この新しい技術は、当社の革新的な能力を向上させると同時に、環境面でも利益をもたらします」と述べています。 

PureCycleは、医療、化粧品、食品・飲料パッケージ、織物や自動車部品など、元のユースケースを含む多くの用途に適した、バージン材に近いポリプロピレンプラスチック原料を作ることができます。 「これは、世界的に低水準にとどまっているポリプロピレンのリサイクル率を改善するための道筋を示すとともに、あらゆるポリプロピレン用途におけるプラスチック供給に新たな機会をもたらします」と、PureCycle Technologiesの最高製造責任者であるDustin Olson氏は述べています。

この高度なポリプロピレンを製造するために、PureCycle はエマソンと提携し、インテリジェントセンサやコントロールバルブ、オペレーションソフトウェア、クラウドデータ管理システムなどを備えた同社の Plantweb デジタルエコシステムを使用して新しい施設を建設しています。

レガシープラットフォームのデジタル変革に取り組む必要のある従来の製造施設とは異なり、これらの施設は、Olson 氏によると「最初からデジタルで作られ」ます。 同社は今後 15 年間で 50 の工場を建設するという急速な拡張計画を立てており、エマソンによる自動化は迅速な拡張に貢献することになります。 「エマソンの協力により、PureCycle の各施設はそれぞれ、プロジェクトの早期完了、完全統合システム、世界クラスの運用パフォーマンスを実現するために、市場最先端のデジタルオートメーション技術でスタートする予定です」


(まさに)再出発

リサイクルの概念をさらに一歩進める取り組みとして、英国に拠点を置く ReNew ELPのプロセスは、ポリプロピレンをその原始化学成分へと戻します。 同社は超臨界蒸気を採用しています。超臨界蒸気は、水に臨界点を超える熱と圧力を加え、液体と気体の両方の性質を呈するようにしたものです。 この超臨界蒸気は、細断された材料中のプラスチックの高分子構造を分解し、リサイクルが困難なプラスチックを新たな炭化水素原料へと転換し、新しいプラスチック製品の製造に利用可能にします。 

汚染された製品や柔軟な多層プラスチック包装など、多くの使用済みプラスチックは従来の機械的リサイクル手法では再生が困難であり、そのためReNew ELPのプロセスに適した対象となります。 これは、 Mura Technology が開発した超臨界HydroPRS蒸気処理および蒸留システムが、プラスチックを元の化学物質および油分へと戻すためです。 また、原料の分別が不要で、汚染されていてもいなくても、すべてのプラスチックを一緒に投入することができます。

世界規模でプラスチック由来の汚染を削減するには、新しいプロセスへの移行を加速し、さらなるイノベーションを行い、意欲的なサステナビリティ目標をサポートできるようにする必要があります。

これらの新しいプロセスは、拡張性のある生産モデルを構築するための高度なオートメーション技術とソフトウェアに依存しています。そこで ReNew ELP は、安全かつ効率的で革新的なプロセスを実現するためのデジタルオートメーションのパートナーとしてエマソンを選択しました。 さらに、同社は ReNew ELP にプロジェクトと運用方法、工場を効率的に稼働させ従業員の安全を確保するための制御・安全システムを提供する予定です。

「ReNew ELP は、使用済みプラスチックを化石代替原料に変換することで、使い捨てプラスチックごみをなくし、代わりに価値を生み出す循環型プラスチック経済の原料を作る能力を秘めています」と ReNew ELP 社のマネージングディレクター、Richard Daley 氏は述べています。

同社は、その新しいリサイクルプロセスが環境に与える影響と地球温暖化の可能性(GWP)を明らかにするため、Warwick Manufacturing Group によるライフサイクルアセスメントを開始しました。 この評価では、プラスチック廃棄物を高度リサイクルではなく焼却から転換した場合に、どの程度のCO2 削減が実現されるかも明らかにします。 最初の調査結果では、GWP が大幅に削減されることが示され、有望視されています。

「持続可能な手法をサポートし、資源保護という目標を推進できるようなソリューションを ReNew ELP が構築できるように、エマソンが共同プロジェクトエンジニアリング、高度なデジタルソリューション、ライフサイクルサービスを通じて支援します」とエマソンのグローバルセールス担当グループプレジデント、Roel Van Doren は述べています。

世界規模でプラスチック由来の汚染を削減するには、新しいプロセスへの移行を加速し、さらなるイノベーションを行い、意欲的なサステナビリティ目標をサポートできるようにする必要があります。 エマソンの提供するソリューションのような高度なデジタルオートメーション技術と、革新的な連携プロジェクトエンジニアリングを組み合わせることで、PureCycle や ReNew ELP のような企業が安全性と信頼性と生産性を確保し、環境と収益に良い結果をもたらす長期的ソリューションを構築できるよう支援できます。 信頼できるデジタルパートナーと革新的な技術の組み合わせは、毎年 1,700 億ポンドも生産されるポリプロピレンプラスチックを大量に削減し、より良い未来への道を切り開くのに役立ちます。